サイドテーブルに置き去りにされて、紅茶はすっかり冷めてしまった。
ベッドに起き上がって、ぼんやりと昨夜の出来事を思い返してみる。残業が思いのほか早く片付いて、時間潰しに一駅分歩くことにした。雨が降ってきたから、普段は寄らない本屋に入った。そこでばったり高校時代の同級生と再会し、思い出話に花が咲いて、飲みにでも行こうよという話になって…。
いろんな話をした。言いたいことは泉のように次々と溢れ出た。こんなこと、何年振りだっただろう。連綿と続く退屈な日々、それが大人になるということなのだと、言い聞かせながら生きてきたけれど、不意に立ち返った十代の自分は、自分でもびっくりするくらい、馬鹿で、どうしようもなくて、きらきらしていた。
私はずっと護敷くんのことが好きだった。そんな話もした気がする。あまり話したことはなかったけれど、体育の授業のときとか、こっそり応援したりしてたんだよ、なんて言って笑ったら、照れてた。そんな雰囲気で二人で飲んで、帰り道送ってもらったお礼に、お茶でもどう? って聞いてみたりして。
結局、護敷くんが紅茶に口を付けることはなく、私たちが愛し合っている間に、紅茶は冷たく澱んでしまったのだけれど。
「──
「…おはよう、護敷くん」
「おはよう」
「紅茶、冷めちゃったね」
「そうだな」
言いながら護敷くんは腕を伸ばし、カップの持ち手に指を掛ける。
「待って、淹れ直すから」
「このままでいいよ」
立ち上がろうとした私に首を振って、護敷くんは紅茶を一気に飲み干した。
それはなんだか、退屈な私を受け入れてくれた行為のような気がして。
何だか、抱き合う前よりどきどきしてしまった。