自転車は土手道を走っていた。
土手道は夕立に打たれていた。
夕立は自転車と、漕ぎ手と乗客をずぶずぶ濡らしていた。
土砂降りの雨は冷たく、肩に触れた手から伝わってくる自分のものでない体温だけが熱くて、その温度差に軽く眩暈を起こしそうだ。
「……寒くないっすか」
「ううん、大丈夫」
斜め後ろを見上げ気味に声をかける。返ってきたさんの声はどことなく楽しそうで、自分のなかの何かが煩い。煩い何かのリズムに合わせて、自転車を漕いだ。

雨粒を落とし続ける空を見上げながら、どこまで行けるかな、と思った。