目が覚めて、私を抱き締める温度のあることが、たまに、泣きたいほど幸福だと感じる。
冷たいシーツの上で迎えた朝を、どんなに時間が経っても、この肌が忘れないのだろう。何て執念深い女なのかしら、と思って、そんな自分に苦笑をしたり。
「────……
名前を呼ばれて、少し、がっかりした気持ちになる。私が起きてるって、この人はいつも、すぐに気付いてしまう。
「もう少し、寝たフリ、していようと思ったのにな」
「それはすまんな」
くすくす笑う声と、私の頬に触れ、髪を梳いてくれる手が心地良くて、私は目を閉じて、彼の全てを享受する。
「久宜」
小さく、彼の名を呼ぶと、私は、彼の匂いに深く、顔を埋めた。