の部屋には、万華鏡が並んでいる。 くるくる変わって二度と同じ図形は見られない、そこが好きなのだそうだ。へえ、と思いながら、一つ手に取って左目に宛がうと、ゆっくり、回してみる。 夢のような虹色の旋転。確かにそれは、美しかった。 そしてどこか、寂しさを感じた。 「久宜?」 「…………ああ」 紅茶とクッキーを用意して部屋へ戻ってきたが、俺の名を呼ぶ。 「きれいだなあ、と思って」 「ふふ、でしょう」 柔らかく笑って、俺の手から万華鏡を受け取ったは、いとおしそうに両手で包んで、それを見つめる。 悲しい夜に、独りで眺めて、泣いているんじゃないだろうな。 ならやりかねん。そんな風に思って、苛立つ自分に気付く。 「……」 「ん?」 なあに、と顔をあげたを、少し強引に、抱き寄せる。どうしたの、と言いながらも、は抵抗するでもなく、俺の胸に顔を埋める。 「俺は、お前に呼ばれたら、いつでも飛んで来る」 だから。 悲しいなら、独りで泣くんじゃない。 そんなものを眺めて、独りで泣いたりするんじゃない。 強く、胸の内に抱き込めると、は小さな声で、うん、と言った。 その吐息の温度が、いとおしくて仕方がない。 |