煙草を吸う時。
コーヒーカップを持つ時。
新聞を読む時。
何気無い瞬間にふと、久宜の手を、見るとなく眺めるのが好きだった。
大きくてごつごつしているけれど、指は長い。広い手のひらは、私に触れる時、とても優しい。
それが今、私へ向けて伸ばされている。
久宜の両手が私の頬をすっかり包んでしまうと、少し硬い指先が、ゆっくりと肌を滑る。、と低い声で呼ばれると、立っていられなくなるくらい心地良い。なあに、と問おうとしたけれど、声になるまえに唇を塞がれてしまって、かなわない。
髪を梳いて、背を這い、私を抱きしめる、久宜の温度が熱い。
そうして、気付く。
私は、久宜の手に触れられるのが好きなのだと。