「晴れたね」 「そーだな」 「のどかー」 「そーだな」 「二人で並んでるのって、久しぶりだよね」 「そーだな」 「もー、シノブちゃんさっきから、『そーだな』しか言わない」 あはは、と笑ったに、楽しそうだな、と吾代は返した。 見上げた空はうす青く遠のいていく視界の端の稜線に、高く間延びした声で鳴く鳥を一羽、浮かばせていた。 「やっぱり、お花も買ってくればよかったかなあ」 「いらねーって、似合わねえ」 「それもそっか」 「だろ」 缶ビールを傾けて、吾代は鼻で笑う。とくとくと注がれるビールに濡れる墓石を見ながら、は、しゃがんだ膝に手を置く。 「……社長はさ」 「ん?」 「俺らみたいなどーしようもねえ連中、何で拾ったんだろな」 「んー……何でだろーねえ」 吾代もも、どん底を早乙女に拾われ、生きる場所を与えられた。 恩とか感謝とか、そんな簡単な言葉では語り尽くせないほど、多くのものをもらった。 もう、いないけれど。 「─────そろそろ、帰ろっか」 「……そーだな」 それから、ビールの空き缶で缶蹴りしながら、土手道を帰った。 社長に拾われた日のことを、二人とも、思い出していた。 |