「この子、どう思う?」
部屋へ入るなり小野田から一枚の写真を突きつけられた中園は、面食らった体を隠すこともできず、はあ、と生返事をした。
「存じ上げませんが」
「そうだろうね。ねえ、どう?」
「は……どう、とは」
質問の意図が分からず反応の鈍い中園に、小野田はもう、と唇を尖らせる。
「美人だとか、性格が良さそうだとか、何かあるでしょう、第一印象」
「は、ええ……大変美しい女性であると、感じましたが」
「あ、やっぱりそう思う?」
うふふと笑って、小野田は中園から写真を取り返す。カメラマンも良かったんだよ、あ、これ撮ったの、僕ね、と、得意気に言った。
「彼女ね、僕の姪っ子」
「あ、はあ、そうでしたか」
「かわいいでしょう」
「ええ、本当に、大変お美しい方で」
「会ってみない?」
「はあ、それはもう……は?」
頷きかけた首をぐいと押し上げて、中園は小野田を凝視した。小野田はうすく、笑みを浮かべる。
「お見合いしてみないかってこと」
「見、っ……し、しかし、私のような者には、勿体無いお話で」
「そう? 似合いの夫婦になると思うんだけど」
「そんな、滅相もございません」
「あら、もしかして、決まったお相手でもいるの?」
「そういうわけでは……ないのですが」
「じゃあ、いいじゃない、会ってみるくらい」
小野田の口車に乗せられて、中園には継ぐべき二の句もない。
「僕はねえ、これでも心配してるんですよ、部下たちにもちゃんと、幸せになってもらいたいって」
「お心遣いは大変嬉しいのですが、しかし……」
「今夜、暇だよね?」
六時にメガロオリエンタルホテルのロビー、忘れないでね、と言って、小野田は部屋を出て行ってしまった。
後に一人残された中園は、ただただ、困惑した顔で突っ立っているしかできなかった。

それが中園の、妻との出会いである。