「まじうけるしー!」
きゃらきゃらとよく笑うポーランドを、はにこにこしながら眺めていた。ポーランドの笑う声は、突き抜けるような青色をした空を思わせる。そんなことを思いながら。
が拾ってきた猫はいたくポーランドの気に入ったらしかった。昨日から、厭きもせず暇さえあれば猫につきっきりで、ミルクをやってみたり咽喉をくすぐってみたりしている。猫の方も人馴れしているようで、嫌がって引っ掻いたりするようなことはなかった。
「見なって、こいつの、ほら、ここをこうすると」
ソファに体を沈めてコーヒーを飲んでいたの方を振り向くと、ポーランドは、両手で猫の脇腹を抱きかかえて、くい、と前足をバンザイの格好に持ち上げさせる。
「ぶみゃあ」
「ぶっさいくな鳴き声!」
きゃはははっと甲高く、ポーランドは笑い転げる。も苦笑した。
「あんまりいじめないでよ」
「しかたないってー、こいつまじうけるんだから」
「みやーあ」
たしかに、「み」に濁点のついたような声で鳴くのは、滑稽にも思えた。お世辞にも、美しい鳴き声とは言えない。おまけにこの猫ときたら、声に似合いのふてぶてしい顔つきをしていて、弛んだ頬と据わった目は、人間ならばさしずめヤのつく職業に従事しているのかと疑われそうでもある。
毛並みや躾けは非の打ち所の無いほどとても良いのに、よれよれの段ボール箱に入れられてぽんと道端に置かれていたということは、おそらくはこの容貌が災いして、時間と手間と金を注ぎ込んでもこの猫の行く先に輝かしい未来を、元の飼い主は見い出せなかったのだろう。
けれど。
「美しいということは大切なことだけど、それが叶わないということがどれだけの意味を持つのかしら」
「はあ?」
柔らかな肉球をぶにぶにと弄っていたポーランドは、の呟きに首を傾げる。
「ねえポーランド、その猫の価値はどこにあると思う?」
「んーそりゃやっぱ、このおっもしろい顔じゃん?」
の問いに、にやにやしながらポーランドは答えた。
「才能あるよねこいつ。俺を笑わす才能」
それが彼の真実で、すべてだった。
「あなたのそういうところ、好きよ」
は笑顔で言うと、私も仲間に入れて、と、ポーランドの膝で丸くなった猫に手を伸ばした。