縁側は午後の日差しにあたためられて、心地良さにまどろむを包んでいた。
「春ですねえ」
急須と湯飲みを盆に載せて台所から顔を出した日本は、そう呟いたの猫背に苦笑する。
「桜は、もうちょっと先ですかねえ」
「公方様のお庭は、もう満開でしたよ」
「ああ、あっちの方は、ここよりあったかいですからね」
日本から茶を注いだ湯飲みを渡され、は笑顔で、ありがとうございます、と言った。
「お城の花見は、一昨日でしたっけ。どうでしたか」
「とってもすてきでしたよ。日本さんは、お仕事で参加できなかったんですよね」
「ええ、残念でした」
まったく中国さんが急に遊びに来るなんて言うから、その準備に追われてたんですよ、と盛大に溜め息をつく日本に、はくすくす笑いが止まらない。
「でも……じゃあ、今度は日本さんも一緒に、お花見しましょう」
名案を思いついた、というふうに、はぱあっと笑顔になる。
「このお庭の桜が咲いたころに。ね? 呼んでくださいね、私、お弁当もいっぱいつくってきますから」
「ああ、それはいいですねえ」
「決まりですね。絶対ですよ」
お酒も用意して、ああ、中国さんがいらっしゃってる日に重なるといいですねえ、などと計画を立てるの楽しそうな様子を見ながら、日本も、庭の桜に目を向ける。未だ枝も剥き出しのそれにはしかし、淡く色付いた蕾が膨らみつつある。
「楽しみですねえ」
「ええ」
春の浮き立つ陽気に、心まで軽快になる。
そんな午後だった。