静かな湖の、水面に浮かび上がる泡のように眠りから覚める。 取り巻いた闇はグレーで、窓の方へ目を遣ると、塔のそこここに点った明かりや点滅する管制室の灯光が、ぼんやりと見えた。 同僚に半ば強制的に帰されて、布団に入ったのがまだ夕方前だったのだが、カーテンも閉めずに夜まで寝てしまったようだ。 むく、と上半身だけ起こして、イワンは、しばらく窓の外を眺めていた。 何もしなくて良い時間、というのは、久しぶりだった。 あの明かりの下では今も、残業中の同僚が時間に追われているのだと思うと、少し、申し訳なく感じながら、同時に笑みもこぼれる。 不思議な気持ちだった。 それはこの薄墨色の空気のせいかもしれなかった。 ふと、こんな穏やかな夜を過ごさせてくれたのことを思い出す。 「…ありがとうございます」 呟いたかさえ定かでないほど小さく、でも確かに、イワンはに、感謝していた。 |