彼女は突然、私の前から姿を消した。 街の喧騒を少し離れた公園のベンチ、大きな噴水の前、夕陽がとてもきれいに見える場所。それが、私と彼女をつなぐ全てだった。私は毎日、花束を抱え、時間の許す限り、ベンチに掛けて彼女を待った。三日が経ち、一週間が過ぎて、一月もする頃には部屋がドライフラワーだらけになってしまった。ブルーローズにその話をすると、ポプリにするから、と花を引き取ってくれたけれど、花がなくなってがらんとしたリビングは何だかとても寂しかった。 もう一度、彼女に逢いたい。 手に触れたいとか、その大きな瞳で見つめてほしいとか、そんな贅沢は言わない。 愛の言葉を囁くことも、できなくていい。 ただ、ありがとうと伝えたかった。 かつてキングオブヒーローと呼ばれながら、その地位と自信を失った自分を、静かに受け止め、導いてくれた人。 どうかあなたに、私の感謝が届きますように。 (けれどあなたは知らない、私の最期の瞬間に、あなたが強くこの手を握り締めてくれたことを) |